カナディアンライフ

カナディアンライフ働く母さん、カナダ子育て奮戦記 その8    By Yasuko Garlick(ガーリック康子)

その8 ランドセル


働く母さん、カナダ子育て奮戦記

    某学習雑誌のTVコマーシャルで、春になると登場するキャッチフレーズに、「ピッカピカの一年生」というのがある。新学期の定番だ。いつ頃から放送されるようになったかは定かではないが、もうかなり古いはずだ。最初の頃、このコマーシャルに登場する子どもたちはランドセルを背負っていた。ランドセルは、日本の小学生の定番だが、こちらにはそういうものがない。子どもたちは、それぞれ思い思いのデザインのバックパック(こちらではリュックサックとはあまり呼ばない)に、荷物を入れて持って行く。教科書を毎日持ち帰る習慣がないので、バックパックの中身は、普通、お昼のお弁当とプラナー(スケジュール帳)だけ。読みたい本を持って行ったり、家で宿題をするために教科書を持って帰ったりするが、宿題のない日もある。

    さて、子どもたちが日本で初めて体験入学をした時のこと。みんながランドセルを背負って登校するので、自分たちもランドセルが欲しいと言い出した。随分昔になるが、私が小学生の頃、ランドセルはそう安い物ではなかった。早速、インターネットで値段を調べてみたが、案の定、高い。小学校入学から卒業まで毎日使うのなら、それほど高い買い物ではないだろう。(現に私も、筆箱をカタカタいわせながら、六年間ランドセルで通った。)けれど、毎日使うわけでもない物に、そんな値段は払えない。しかも、二人分。

    そういえば、私が小学生の頃、ランドセルの色は男の子は黒、女の子は赤と相場が決まっていた。子ども心に、あまり格好のいいものだとは思っていなかったし、色もいまひとつ気に入らなかった。けれど今は、その色もかなり豊富で、キャラクターのついた可愛いランドセルまである。そんなランドセルなら、喜んで使っただろう。

働く母さん、カナダ子育て奮戦記

    そもそも、「ランドセル」とは一体どこから来たのかと思い、調べてみた。その語源は、オランダ語の「ランセル(ransel)」からきているらしい。日本での使い道と同じように、背負って運ぶ方形の鞄だった。日本に入って来たのは、幕末の頃。当初は、オランダ語をそのまま使っていたようだ。「ランセル」が「ランドセル」に変化し、日本に定着したらしい。その後、明治時代に入って、陸軍の将校用の背嚢として制定され、通学鞄としては、学習院で、この背嚢を原型とした物が使われるようになった。さらに、明治20年に、当時の内閣総理大臣、伊藤博文が、大正天皇の学習院初等科入学を祝って、特注して献上したことがきっかけとなり、広く一般に普及し始めたらしい。

    今度日本に行く時は、もう体験入学はイヤだと言うかも知れない。ランドセルもきっと買う機会はないだろう。けれど、子どもたちがランドセルを背負って通学する姿を、見てみたかった気もする。

Yasuko GarlickYasuko Garlick(ガーリック康子)

おもに翻訳、通訳、チューターを生業とする2児の母。夫はカナダ人。
数カ国に滞在後、カナダ在住6年目。
最近、カレッジに通い始め、次の目標に向けて勉強中。



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