カナディアンライフ

カナディアンライフ働く母さん、カナダ子育て奮戦記 その12  By Yasuko Garlick(ガーリック康子)

一体誰が教えるの?


一体誰が教えるの?

    2008年に、日本の文部科学省が、小学校5・6年で、週1コマ「外国語活動」を実施することを決めた。「外国語活動」とは言っているが、つまり英語教育である。地域によっては、「外国語指導員」や「外国語指導助手」という、特別職の非常勤教師が英語を教えているようである。「英語を母国語とする外国人、またはそれに相当する英語力を持つ者」というのが一般的な採用条件だ。そうでない場合は、学級担任が「英語」の授業も行うことになる。

    そこでひとつ疑問がわく。現在、小学校教員として教えている先生方が、大学で教職過程を取っていた時点で、「英語」という科目はなかったはずだ。過去2年間に卒業し、教員試験に受かった新卒の先生方以外、誰も教え方を勉強していないのではないか。その上、「英語」は外国語である。英語留学の経験があるとか、帰国子女だったりする場合を除いて、中学、高校、または大学での「英語」にしか触れていない。それをいきなり、国の方針だからといって、教えられるようになるわけがない。

    また、ゆとり教育で子供たちの学力が低下しているということで、その「修正」のために、4月から新学習指導要領の一部先行実施が始まった。習得する項目が増えたり、教科書が増えたり、英語については、これまで高校で教えられていた内容が、一部中学校で教えられるようになるらしい。小学校では英語科もとなると、教える先生たちは大変だ。 私も、今では英語に関わる仕事をしているが、大学在学中にアルバイトをしたお金を貯めて、初めてパスポートを取って、初めて飛行機に乗ってイギリスに行った後、留学しようと決めるまで、「音楽」として英語は聴いていたが、「外国語」として勉強したのは学校の中だけである。私が学生だったのは、もう何十年も前のことだが、この状況は今もそれほど変わっていないようだ。

一体誰が教えるの?    さて、外国語の教え方には、2つのパターンがあると思う。例えば、英会話教室に通う幼児には、文法などは教えず、簡単な単語やフレーズから教えるはずだ。何回も繰り返し使うことで英語が身に付いていく。小さい子どもには、文法を説明しても理解する能力が備わっていないので、この方法で教えるしかない。これが「体で覚える」方法。子供たちがある程度大きくなるまで通用する。もうひとつは、単語やフレーズだけでなく、文法構文を取り入れて教える方法。文法が理解できると、身体で覚えにくい部分がカバーできる。これが、「頭で覚える」方法。「国語」で文法を勉強するようになる頃から始められると思う。ただし、この方法だと、どうしても文法に偏る傾向がある。「体で覚える」方法は、赤ん坊が、母語を習得する方法から考えても、理にかなっている。言葉が喋れない赤ん坊が、繰り返し家族の言葉を聞いていくうちに、片言を話すようになる。成長するにつれて使える単語が増え、それらを組み合わせて、だんだん長い文章が作れるようになる。文法を理解して喋れるようになるわけではない。大人に教える場合、この二つの方法を上手く組み合わせるのが、理想的な方法だと思う。

    赤ん坊の言語の習得について、研究からわかっていることがある。それは、新生児は、両親の使う言語に関わらず、存在するすべての発音を聞き分けることができるというものだ。それが、ある特定の言語の発音を繰り返し聞くことにより、その言語の発音ができるようになる代わりに、その言語にない発音は、よく聞こえなくなるらしい。例えば、両親とも日本語を話す場合、生まれたばかりの頃は「r」と「l」の違いを聞き分けることができるが、日本語にはこれらの発音がないため、聞き分けられなくなる。日本人にとってこの二つの発音が難しいのは、こういう理由からきていると思う。個人差はあると思うが、聞き分けられない人にとっては、どう頑張っても聞き分けられないようだ。発音を「聞き分ける」という点については、私なりの理論があるが、これについては、また後日書きたいと思う。

Yasuko GarlickYasuko Garlick(ガーリック康子)

おもに翻訳、通訳、チューターを生業とする2児の母。夫はカナダ人。
数カ国に滞在後、カナダ在住6年目。
最近、カレッジに通い始め、次の目標に向けて勉強中。



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