カナディアンライフ

カナディアンライフ働く母さん、カナダ子育て奮戦記 その15  By Yasuko Garlick(ガーリック康子)

子連れで空の旅


子連れで空の旅

    うちの子供たちは、かなり小さい頃から飛行機に乗って移動している。チケット代は今より安くて済んだが、とにかく荷物が多かった。赤ん坊の頃は、普段は布おむつでも、旅行には紙おむつを使うことになる。これがまた何ともかさばる。他にもおやつ、飲み物、着替え、おもちゃ、お手拭きにおしり拭き…。あっという間に機内持ち込み用の手荷物がいっぱいになった。

    そう言えば、下の子が6ヶ月の頃、当時住んでいたタイから日本に帰った。離陸する時、気圧の変化で耳が痛かったんだろう。しばらく泣き止まない。通路を隔てて隣の席の中年男性が、本当に嫌な顔をして、うるさいから早く泣き止ませろと文句を言った。泣き止んでほしいのはこっちも同じ。子供がいてもおかしくない年格好の男性だった。自分の子供でも、同じことを言うんだろうか。育児に協力してきてないんだろうなあ、といろいろ詮索をしてしまった。席はスクリーンの一番前で、バシネットを用意してもらったが寝ない。だっこして寝たかと思って下ろすと、目を覚まして泣き出すことの繰り返し。結局この時は、日本に着くまで抱っこしっぱなしの、機内を歩きっぱなし。腕が痛くなり、すごーく疲れた記憶がある。夫も一緒だったから、上の子を面倒見てくれたが、私一人だったらどうなっていただろう。

子連れで空の旅    今では子供たちも大きくなり、こんなことはもうないが、やっぱり困るのが、途中下車できないこと。つまらなくなっても、せいぜい、機内を「散歩」するのが関の山。そこで大活躍するのが、席に備え付けられている小さなスクリーン。昔は、前方の大きなスクリーンで、みんなが同じ映画を見るしかなかったが、今は自分の好きな映画や番組を見ることができる。子連れの旅では、これが本当にありがたい。長いフライトだと、子供たちは何をしていても飽きてくる。バンクーバー・成田間のフライトでも、往復で所要時間に差はあるものの、やはり9時間前後はかかる。子供たちには普段あまりテレビやビデオを見せていないから、ここぞとばかりに見まくる。おかげで、映画を見過ぎてほとんど寝ず終いになることもあるのが、困ったところ。でも、見そびれた映画が見られて、実は私にとってもありがたい。

    さて、子供たちの夏休みに合わせて2年ぶりに日本に帰った。できれば毎年帰りたいところだが、私にも仕事がある。フリーランスなので、帰る時期を避けて仕事を受ければいいのだが、有給休暇があるわけでも、旅行手当があるわけでもない。仕事をしない分、収入も減る。大体チケットが高すぎる。格安チケットでも夏休みだから高い。だったら、もっと安い時期に帰ればと言われるかもしれないが、子供たちを連れて長期的に帰れるのは、夏休みしかないのだ。カナダと日本の夏休みが始まる時期のズレを利用して、日本の学校に体験入学もできる。たった数週間でも、この時に子供たちが吸収する日本語はかなりのものだ。えっ!?と思うような言葉ももちろん覚えてくるが、丁寧語など普段使わないような言葉も覚えてくれる。これは何物にも代えられない大きなメリットなのだ。

子連れで空の旅    ところで、今回チケットを買う段になって気がついた。飛行機は「12歳から大人運賃」なのだ。上の子は、チケットを買った時はまだ11歳だったが、飛行機に乗る時には12歳になっている。それも12歳になって1週間しか経っていないことになる。とても損した気分になったが仕方がない。ちょっと痛いが、大人料金を払った。「11歳って言って買えないの?」ときく友達もいたが、電車賃とはわけが違う。パスポートを見れば一目瞭然、歳がわかってしまう。諦めるしかないのだが、このきまり、どうも納得がいかない。12歳といってもまだ小学生。美術館だって遊園地だって、小中学生は料金が違うし、バスや電車も、小学生は子供運賃なのに…。一体、誰が決めたんだろう。

     それでも、メリットがなかったとも言えない。機内食だ。これまでは、私が「ベジタリアンミール」で子供たちは「チャイルドミール」だった。今回は、上の子が普通に大人と同じ機内食を食べた。食事そのものの量が多いし、彼女曰く、チャイルドミールより美味しいそうだ。最近食べる量が増えて、あの細い身体のどこに入っていくんだろう、と不思議になるくらい食べる。下の子は、飛行機に乗るとあまり食べないので、その分もしっかり食べていた。それでも暫くすると、最近の口癖、「お腹空いた」が出たのには驚いた。まさに「底なし」状態だ。どんどん食べて大きくなって、私の背を追い抜くのも時間の問題のようだ。

     さて、しばらくは、こんな保護者同伴の旅が続きそうだ。けれど、いずれ子供たちだけで旅をする日が来るだろう。その日まで、子連れの旅を十分楽しもう。
来年もできれば日本に帰りたい。しっかり働かなくては…。

Yasuko GarlickYasuko Garlick(ガーリック康子)

おもに翻訳、通訳、チューターを生業とする2児の母。夫はカナダ人。
数カ国に滞在後、カナダ在住6年目。
最近、カレッジに通い始め、次の目標に向けて勉強中。



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