カナディアンライフ
カナディアンライフアイウエオな毎日 その9 By Michelle Igarashi

実と夢の狭間で涙する」


現実と夢の狭間で涙する思いっきり私事ですが、13年半連 れ添った愛犬が天に召されました。ここ数年は体力もどんどん落ちてゆき、2年前の異常な猛暑の時には熱射病にもなり、 また、朝夕のおさんぽも数メートル も歩くと座り込んでしまう、というほどの衰弱をして、もうダメかもしれない、と覚悟したくらいでした。
その夏を乗り切り、ブロックく らいは歩けるようになったのに、去年の夏、大病をして生きるか死ぬかのノーチョイスの手術をしました。大型犬ですから13という年は 人間で言えば90歳前後、十分といえば、十分、毎日が宝物のような時間だよ、と獣医さんに言われていました。それでも手術をしないで 逝かせたくなかった。僅かな確率にかけました。
結果、手術を乗り越え、一時寝たきりでしたが庭に出るまでに回復しました。傷口が癒え るのに3ヶ月半もかかりました。老人介護ならぬ老犬介護の日々でしたが生きていてくれることが嬉しかった。

現実と夢の狭間で涙する 家族の中で私に一番なついていて、 寝たきりの時も体を動かせるのは私だけでした。膝に頭を載せたり、頭を撫でてもらうのが好きで、撫でるのをやめると、「もっと、もっ と」と頭で手を押しました。気が優しいのに臆病で、外に出て知らない犬に会うと吠えてしまい怖がられてしまうので(本当はすごく優し い子です)、人のいない時間帯にお散歩に出て、森を走ったこともありました。
まだ若い犬だったので、キャニオンの森をはしり回るのは 楽しかったでしょう。夏の早朝、モヤの中を森に向かって、大きな2頭の狼をみたときもありました。狼はじっと私たちを見て、そのまま 森に去って行きました。あのときのことはまるで美しい幻想のようなシーンでした。

現実と夢の狭間で涙するおすわりも伏せも、待てもアップも ジャンプも、ロールオーバー(半回転ですが)もできました。いつのころからか足が弱って、キッチンのタイルに滑って立てなくなり、 カーペットのある場所にしかいられなくなってしまった。
森を走ることもなくなり、アップもジャンプもできなくなってしまった。逝くと きは突然で、私のCPRも意味なさなかった。生まれる時も、逝く時も誰にも何 も出来ない、定められた時です。本当の「その時」は誰も止められない、かえられない。
生きている限り、必ず愛するものとの出会いの喜 びと共に、別れの悲しみを経験せねばなりません。今はもう冷たくなって動きません。これから体は空気に帰って、魂になって来世で元気 に走れるようになるでしょう。たかがペット、と思う方もおられるでしょう。でも、どんな命でも出会った時から、愛した時から家族です。
人と人のかかわりと同じように、時に人では得られない愛も動物たちは与え、おしえてくれるものです。しばらくは、もういなくなっ てしまった現実と、失ってから思い出される数々の思い出の夢の狭間をうろうろしながら涙をこぼしてしまいます。
13年半、そばにいて くれてありがとう。いつか会える時まで、待っててください。

Michelle Igarashi Michelle Igarashi
カナダ在住の日系人の皆様のための医療アドバイス、妊娠、出産のサポート、産後のケア、母乳マッサージ、授乳指導、ベビー検診、育児指導、離乳食指導、応急処置クラスなどを随時開催しております。

詳しくはこちら
http://canadamom.babymilk.jp/

Top of page


1981-2009 Copyright (C) Japan Advertising Ltd. Canada Journal, All rights reserved.