言葉にはいろいろな思いが込め られていますね。
自分の考え、思い、感情のほとばしりを言葉にして伝えるのはほんとうに難しいです。母国語であっても思いの全て をきちんと表現できる人などいないのではないかと思ってしまいます。一生懸命考え考えして言葉にしても、じぶんの期待どおりに相手に伝わるとは限らず、ときにはまったく伝わらないどころか、反対の意味になってしまったり、こんなことは誰もが経験したことが あるのではないしょうか。言葉には言霊が宿る、といいます。思いを込めた言葉は相手にいろいろな影響を与えます。
プラスにもマイ ナスにも働きますし、自分の思うより大きく伝わることも、その逆もあります。
だからこそ、ひとことひとこと を大切に伝えたいとつねづね考えます。医療者の端くれの仕事ですから不特定多数の方と接します。わたしのひとことで相手が気分を 害したり、悲しい思いをしたりしないように、まちがった理解をされないように、気をつけて言葉を選びます。
それでも、ぜんぜん伝 わっていなかったり、大切な事を伝えたつもりがあっさり忘れてしまわれたり、役に立たなかったことも多々あります。こんなときは がっかりしてしまいます。どんなに気を使っても、何気ない一言でどなたかを傷つけてしまったこともあるかもしれません。
自身で気 がつかないまま、不快を与えたこともあると思います。言葉で思いを伝えるのはほんとうに難しいものです。
それでも、ときおり、私の言葉で元気になりました、といっていただけることがあって、そんな嬉しい言葉をいただくとわたしもまた元気になれます。
相手が大人に限らず、小さな子どもでも、赤ちゃんでも、動物でも、心を込めて言葉を選びます。むしろ子供や動物のほうが言葉にある感情を敏感に感じ取ります。
これは大人のようにその時の状 況や感情、先入観などにふり回されることが少ないからでしょう。子供や動物は言葉で返事をするのは難しいのですが、輝く瞳や豊か な表情ですぐに応えてくれます。
なにげなく聞いた言葉をある日 ふと思い出し、その意味の深さに気がつくこともあります。何年も何十年も昔のひととき、一瞬の情景を突然思い出し、その時交わし た、または言った言葉の中に、大きな感情のほとばしりがあったことに驚くこともあります。
何かの拍子に葉っぱが風に舞う ように、心の底にずっと積もっていた思い、出来事の言の葉が舞いでてくることがあるのかもしれません。
これから先、あとどれほどの時 間がわたしにあるでしょう。どれだけたくさんの人と言葉を交わすでしょう。ひとつひとつの言葉をおろそかにしないように、伝える 相手と同じ目の位置にたち、思いを込めて、相手への思いやりをもって言葉を伝えてゆきたいと思います。