カナディアンライフ
カナディアンライフアイウエオな毎日 その23 By Michelle Igarashi

(ぬえ)の鳴く闇は心のなかにあり」


鵺(ぬえ)の鳴く闇は心のなかにあり「鵺」ってご存知ですか?「鵺」は平安時代よりも古く語られた夜鳴く謎の化物に付けられた名前です。鳴き声の主はおそらくトラツグミという鳥だと言われていますが、 電気も何もなかった時代、夜はまさに深淵の闇でしたから、そこにうごめく魑魅魍魎*(ち みもうりょう)にひとびとはおびえました。音らしい音もなくなる夜は、時折鳥の鳴き声も大きく響き、何やら恐ろしい化け物の声に 聞こえたことでしょう。平家物語や源平盛衰記などには猿、狸、虎、ヘビ、鳥などいろいろな獣の合わさった身体の化物として表され ています。転じて、得体のしれないもの、得体のしれない人を表す言葉としても使われました。

 鵺(ぬえ)の鳴く闇は心のなかにあり人の心の中には誰もが闇の部分を持っ ていると思います。ポジティブに対してネガティブ、善に対して悪、思いやる心と保身の心、幼い子供をのぞけば2面持たない人は存在しないのではないか、と思います。世にはびこる犯罪も、争いも、ま さしく人の心に住んでいる闇夜の鵺が姿を表したようなものではないでしょうか。

 鵺(ぬえ)の鳴く闇は心のなかにあり 私は医療者の端くれとして、母親とし て、人間として、この世に生きている中で何を考え、何を知り、何を行動するべきなのかをよく考えてきたつもりですが、それでも、 ただの平凡な人間でもありますから、気分の良し悪しに振り回されますし、好き嫌いもあります。他者に対して心穏やかに接すること は医療者の基本中の基本ですし、他者に関わり、お世話する立場なら、相手の立場にたって常に物事を考えるのもまた重要です。しか し、自分がそうしていても、相手が同じように考えてくれるかといえばそうではなく、互いに思いが咬み合わないことは多々あります し、ひとりひとり育った環境も受けた教育も異なりますから、どう努力しても全く通じなかったり、不快な思いをさせられたり(させ たり)は、多分どなたでも日常茶飯事ではないでしょうか。
そんなとき腹立たしい思いが沸き立ったり、嫌悪の感情に振り回されてし まったり、もまた何度も経験したものです。ばくぜんと「良い人間」を目指しても、なかなか心のなかにある闇をコントロールするの は難しい。年をとっても丸くなるのは難しいものですね。

 鵺(ぬえ)の鳴く闇は心のなかにあり 私の中の「鵺」も、ときどきギャー ギャー叫ぶようです。(あぁ、情けない) いまの世の中、「鵺」がアチラコチラ で騒いでいるような気がします。自分の中の「鵺」に気が付かないまま、心のなかに収まるどころか、すっかり外に出て頭の上に大き な「鵺」が陣取っているのに気が付かないで生きている人がどんどんふえてきている気がします。 かって闇に隠れていた魑魅魍魎、いま 「ひと」という名前になって明るいうちからどこかしこにも跋扈*(ばっこ)して いるような…

*…魑魅魍魎(ちみもうりょう)  いろいろな化け物、妖怪  *…跋扈(ばっこ) ほしいままに振る舞う、のさばる こと


Michelle IgarashiMichelle Igarashi
カナダ在住の日系人の皆様のための医療アドバイス、妊娠、出産のサポート、産後のケア、母乳マッサージ、授乳指導、ベビー検診、育児指導、離乳食指導、応急処置クラスなどを随時開催しております。

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