<前回のあらすじ>
カナダに男女差別はあるかと聞かれて、クリスティーンが勢いよく話し出した。
カナダは、日本と比べれば差別はずっと少ないと思うわ。実力しだいで女性でも出世できるし。
でも、同じ仕事をしても、女性の給料が男性よりも低いという場合もあるわ。
すべてがすべてじゃないけど、まだまだ自分の方が女性よりえらいと思っている男が多いのよ。
なんとなく興奮してきたクリスティーンに、シンジくんが気後れ気味に言った。
でも、カナダでは、レディーファーストの習慣がしっかりあったりして、男性が女性に優しいですよね。
「今こそ自分の出番だ」と思ったジミーがシンジくんに言った。
それはね、当たり前なんだよ。男は女よりも強い。強いものが弱いものを守るのは当たり前だ。
レディーファーストの習慣はそこからきてるんだ。つまり、我々の伝統的な価値観だね。
それを聞いたクリスティーンが、「これだからダメなのよ」って表情で言った。
男より強い女もいるわ。レディーファーストの習慣はありがたくいただくけど、その代わりに給料が少ないなんて真っ平よ。
それに、伝統的な価値観っていうのが問題なんだわ。
職場でも、家庭でも、私たちはいま、古い価値観を超えた新しい価値観の中で生きているのよ。
熱くなって話すクリスティーンに引き込まれてヒロミちゃんが言った。
クリスティーンの迫力が一層増した。
例えばカナダでは、入籍しないカップル、同性同士の結婚、シングルペアレントなどが増えているわ。
両親を見習って結婚したり、単に習慣に従って結婚するのではなく、自分たちにとってより意味のある関係を求める人たちが増えているのよ。
ヒロミの頭の中を、クリスティーンの言葉がぐるぐる回り出した。自分から選んで入籍しないカップル、同性同士の結婚、シングルペアレント・・・。正直、自分ではあまり考えたことはなかった。
「いったい、カナダ人ってどんな人たちなんだろう・・・。日本人の考えは遅れているのだろうか・・・」そうだ、シェアメイトのスティーブに聞いてみよう。
(つづく) |