『 第59話 』シンジ君のほのかな想い
【前回のあらすじ】
コミュニティーセンターを通じて新しい人たちとの出会いや発見があり、シンジ君のカナダ観がだんだん広がっていった。
シンジ君には、ほのかな想いを感じている人がいる。
それは、クリスティーンだ。ジミーのガールフレンドなので所詮かなわぬ人なのだが、
クリスティーンのことが頭の中から消えないのだ。最近クリスティーンはジミーを訪ねてくることがないのでずいぶん会っていない。
そんなある日、まるでシンジ君の願いがテレパシーでクリスティーンに伝わったかのように、クリスティーンから電話がかかってきた。
こんにちは。ずいぶんご無沙汰だけど、お元気?
Hi. We haven’t seen each other for a long time. How are you?
ちょっと頼みたいことがあるんだけど、会ってもらえないかしら。
I have a favor to ask of you. Would you be able to see me?
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クリスティーンは、新聞社の仕事で日系カナダ人を取材することになり、シンジ君に通訳を頼みたいという。顔が真っ赤になりながら、シンジ君はちょっとつかえ気味に答えた。
も、もちろんいいよ。いつ、会おうか。
Yes, of course. When would you like to meet?
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二日後に公立図書館で会うことを約束して電話を切ってから、シンジ君は踊りだしたいような気持ちだった。ジミーにはすまない気持ちでいっぱいなのだが、正直のところ、うれしさが先立って、後戻りする気にはなれなかった。
二日後、シンジ君が約束の時間より20分早く図書館に行って待っていると、クリスティーンは時間通りやってきた。きれいなスマイルを見せながらクリスティーンが言った。
会ってくれてありがとう。元気そうね。
Thank you for meeting with me. You look great.
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シンジ君は一瞬、シンジ君を見るクリスティーンの目の輝きが今までとは違うように感じた。
(続く)
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