【前回のあらすじ】
カルガリーから3時間ほどバスで走ったヒロミちゃんは、メディスンハットの駅で降り、タクシーをつかまえて大平原に向かった。

タクシーの運転手はみるからに人の良さそうなカントリーマンで、ここでは日本人を乗せることもないので、興味津々だ。

メディスンハットの町を出て2 分も走ると車は大平原に入った。見渡せば一面の麦畑で、舗装もない砂利道が地平線の向こうまで続いている。
ヒロミちゃんは運転手に車を止めて待っているように頼み、一人で麦畑に入っていった。

空がどこまでも大きい・・・・
そして、音がない・・・・
麦の穂はひざの高さほどもあり、歩くたびに足元からものすごい数のバッタが飛び立つ。

見渡す限り何もない景色と、心臓が高鳴るような静かさと、飲み込まれそうな空に、ヒロミちゃんは圧倒され、ひざが震えた。

文字通り時が経つのも忘れたヒロミちゃんは、約束の時間をずっと遅れて車に戻った。
運転手が、面白がっているような様子で聞いてくる。

運転手の質問に答えるとも独り言ともいえる調子で、ヒロミちゃんがつぶやいた。

その晩、ヒロミちゃんはメディスンハットのバス駅に近い簡易ホテルに泊まった。
木の床がギシギシ鳴る部屋の中を歩きながら、ヒロミちゃんの胸の中で、今日の興奮がいつまでも続いていた。
(続く)

ご紹介する単語やフレーズは、この物語のシチュエーションにマッチした英訳です。 シチュエーションによっては様々な単語やフレーズがあるので、類語辞典などを使って調べてみましょう。